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第776話

人波は確実に減ってはいるが、ゆっくりだ。 受験や就職、恋愛関係に悩み。 願うことは多種多様。 鈴を鳴らし、住所や名前を言ってから願うとかも聞いたことがある。 1人ひとりがそうして願っていれば時間はかかるか。 それに、複数人で訪れている場合は、そのグループの誰かがお参りを終えていなかったら割り込みずらい。 時間は沢山あるし、待つのは構わないので甘酒を飲みながら弟達の話を聞く。 楽しそうにゲームの話をし、こちらも甘酒を飲んでいる。 「遥兄、最近ゲームしてる?」 「あー、まぁ、ぼちぼちって感じ。 卒論書いたりしてたから」 「大学生っぽい」 「ははっ、大学生だからな」 キッチンカーで買ったからあげを頬張りながら、優登が頷いていた。 「歳離れてんのたまに忘れるよな」 「うん。 なんか高校生のイメージ強いんだよな」 「分かる。 兄ちゃんが酒飲んでると、なんか頭が混乱すんだよな」 「え、酒飲むの?」 「たまに」 「大人じゃん」 それに関しては理解出来る。 所謂、親は歳をとらないってやつだ。 だから、進学や就職で実家を離れた子供が久々に親に会うと老けて見える。 親だって歳をとるのは当たり前なのに、なぜかふと忘れてしまう。 強いイメージがあると、それが固定されてしまうというか。 長岡も20代のイメージがあるが、30代になっている。 若い年齢の先生ではあるが、入学当時の若い先生ではない。 その先生は、もうすぐ賽銭箱の前だ。

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