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第778話

「あけましておめでとう」 「あけましておめでとうございます。 お待たせしてしまって…」 言葉を遮るように、暖かなお茶を頬に押し当てられた。 「ありがとうございます。 お茶も、来てくれたのも」 「ん。 俺も会いたかった」 此方の方が、長岡は嬉しいんだ。 そういう顔をしている。 謝るより、ありがとうが良い。 それは長岡だけではない。 三条も同じ。 だから、ありがとうなんだ。 「さっきはびっくりしました。 神社に来てたんですね」 「あぁ。 どうなら、一緒に年越ししてぇなって思ってな」 「誘ってくださったら良かったのに」 「たまには弟に譲らねぇと。 来年からは、また俺が予約するし」 “来年”。 長岡の口から、ごく当然のように発せられた言葉。 それが、とても嬉しい。 「ふにゃふにゃした顔してんぞ」 「嬉しいですから」 「ふぅん?」 「今から予約します」 「良いのかよ。 お兄ちゃん」 「良いんです」 来年…ではなく、今年のことを考えると不安もある。 常勤で働きたい。 だけど、それだって不安だ。 どうしても実習不足という言葉が頭を過ってしまう。 どんなに勉強しても、知識を頭に詰め込んでも。 だけど、そんな不安の中で楽しみが出来た。 それがどれほど心強いか長岡は知らないだろう。

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