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第780話
「御神籤ひいてたよな。
大吉か?」
「はい。
就職もありますし、運試しとしても良い引きです」
「そりゃ、期待出来んな」
「正宗さんは御神籤ひきましたか?」
「あぁ。
俺も大吉。
正月休みだなら大吉しか入ってねぇんじゃねぇのか?」
「なんですかそれ」
手を握ったまま話を続ける。
時々遠くに人が見えるが、それは今日がお祝いにも似た日だからだ。
年が開けるというだけで、街は鮮やかになり夜も明るい。
祝いの飯を楽しみ、昼から飲んだりもする。
改めて考えると不思議な日だ。
誕生日のように、自身に直接関係ないのにこうして祝うのだから。
けれど、それ含め楽しいと思うようになった。
隣でふにゃふにゃ笑う子の影響だろう。
「正宗さんは、からあげ食べましたか?」
「あぁ。
食った。
なんか檸檬のってて美味かったな」
「美味しいかったですね。
やっぱり、夜に食べる揚げ物って最高に美味しいですよね」
本当に食べることが好きなんだと分かる顔に、しあわせを感じる。
触れることの出来るしあわせのカタチ。
骨張っていて、細くて、あたたかくて。
良いもんだと思う。
心の底から。
「揚げ物に炭酸キメんの最高だよな」
「最高ですねっ!」
「コーラ?
サイダー?どっちが好きだ」
「うわぁ、迷いますね。
えー、あらあげとフライドチキンならコーラです。
あと、フライドポテトも。
揚げ焼きのたこ焼きとか春巻きならサイダーですかね」
真剣な顔で悩んでからの、この顔だ。
今年も良い年になりそうだ。
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