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第785話

「ちょっとだけ、良いですか?」 お茶の用意をしていると、三条が背中から抱き付いてきた。 珍しいと思いつつ、好きに甘えさせる。 長男だって甘えたい。 男だって甘えたい。 そんなのは当たり前のことだ。 「背中があったけぇ」 「正宗さんは良いにおいがします」 「柔軟剤だろ。 つぅか、この部屋に置いてる遥登の私服だって同じにおいだろ」 「正宗さんの体臭です」 「んだそれ」 そりゃ愉快な話だ。 クスクスと笑いながら、話をしつつ久し振りのお茶を煎れる。 年明け前に蜜柑を買ったので、ダラダラしながらそれを楽しみたい。 けど、今の背中に抱き付いてくれる恋人も最高のシチュエーションだ。 あたたかくて、しあわせで。 「アイスも買ってあんぞ。 後で半分こすっか」 「はいっ。 嬉しいです」 こうダラダラするなら、ホットカーペットや炬燵があると最高なのだが。 なんだかんだで、いつも大判のブランケットにくるまり床に腰を下ろしている。 それなら、購入も視野に入れるべきか。 けれど、炬燵のある実家での生活を思い出すと、猫達と1日中炬燵に浸かって本を読み漁っていた。 きっと今でもそうなるだろう。 お湯が沸くのを待つ間、手を握ったりより密着させたりする。 されるがままの三条の纏う空気がよりやわらかくなっていくのが分かる。 沢山頑張った1年だったんだ。 労ったって良いだろう。 「今日はダラダラしような」 「はいっ」

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