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第790話

ダラダラと本を読んでいると、隣にくっ付く手が自分を抱き締めた。 眠っている恋人が寒くないかとブランケットを引き上げる。 夜更かしし、軽く寝てからこの部屋に連れてきた。 それに加え腹一杯飯を食ったんだ。 そりゃ眠いだろう。 読み途中の本を閉じ、三条の方へと身体を寄せる。 口元までブランケットに埋もれているから、少しだけなら大丈夫だろう。 顔にかかる髪を耳にかけ、また少し大人びた顔を覗く。 夜に見た、弟ともよく似ている。 いや、弟が三条に似ているのか。 丁度付き合ったばかりの頃の三条の年齢ほどの弟。 だからだろうか。 なんとなく、甘やかしたくなるのは。 付き合えた今となれば、もう少し待てば良かった、もっと他の方法を選択したら良かった、と思うこともある。 あんな酷いことをして傷付けてまで、自分のものにすることに躍起になることはなかった。 愛おしいだけ伝えたら良かった。 けど、それを三条に伝えたらきっと笑うだろう。 『そんなこと気にしてませんよ。 それに、それがあっての今です。 俺にとっては、それすら大切な思いでです。 正宗さんでも否定しないでください』 ってな。 指の背で頬を撫でる。 愛おしい、愛おしい、と。 飽きるまで撫でると最後に手のひらで額に触れ、その上からキスをする。 そうして、長岡も目を閉じた。 新年早々の昼寝は、とても気持ちが良い。

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