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第791話

「沢山寝ちゃいました…」 「良いことじゃねぇか」 「良いことなんですか…?」 林檎を剥く長岡の隣で飲み物煎れ直していると、小さく切られたそれが差し出された。 「良いことだろ。 ほら、味見」 ありがとうございますと受け取ると悪戯っぽい笑顔が向けられる。 よく見ると長岡その手にも小さく切られた半分が。 甘くてシャリシャリしていて、冷たくて美味しい。 昼寝であたたまった身体に冷たい甘さが沁みる。 「美味しいです」 「お、甘いな」 こういうのは、味見やつまみ食いが1番美味しい。 それを差し引いても美味しい林檎だ。 冬となるとその厳しさが牙を向く雪国だが、その中にも楽しみはある。 例えば、食べ物。 あったかいお風呂。 雪遊びもそうか。 そういうものに目を向け、季節を楽しみ満喫したい。 出来れば、長岡と。 「うし。 終わり。 戻ろうぜ」 「はい」 マグと林檎ののった皿と、それから長岡はチョコレート菓子を手にした。 「これも食おう」 これは、暫くブランケットに潜り込み映画やドラマ、読書のパターンだ。 だけど、それさえ長岡と一緒なら嬉しい。

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