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第795話

「兄ちゃんもなんか飲む?」 「じゃあ、お願いしようかな。 優登と同じの」 「あーともっ! ぎゅーぎゅー!」 「うぃー」 そのまま冷蔵庫へと進む弟を見送り、綾登の頬を揉んでいると次男の驚いた声が響いた。 音からしてマグカップは落としていないらしい。 「かっ!!あさんっ、なんで静かにパントリーにいんだよっ」 「え、この中、整理してた。 独り言言ってたらこわいでしょ」 「そうだけど…。 ビックリすんだろ」 「こわかった? ごめんね」 隣の綾登が、ゆーとびっくりしたの?と聞いてくる。 見に行きたい気持ちと、炬燵から動きたくない気持ちとが戦い、炬燵から出ないことを決めたらしい。 小さくても炬燵の虜だ。 そして、それは三条も同じ。 飲み物を頼んだのに薄情だ。 だが、パントリーに母親がいるのを知っていたので、何故か優登も知っていて当然だと思ってしまっていたのも事実。 「みっちゃ、いたもんね」 「いたな。 教えてあげれば良かったな」 「なんでぇ?」 「んー、びっくりするから?」 綾登は、ふぅん?と興味なさそうな顔をして、興味をテレビへと移した。 マイペースというか、変に他人に興味がないというか。 綾登の良いところだ。

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