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第799話
「いっぱい!」
「お正月だからね」
「いいひね」
「お年玉ももらえるしな」
家族揃って席に座ると、綾登がパチッと手を合わせた。
自宅でも保育園でも沢山している食事前の挨拶。
綾登が出来るようになると、嬉しそうに率先してやるようになった。
小さな成長は大きな成長。
それを見付けるたびに、喜びを噛み締める。
「いたあきます」
「いただきます」
「まーすっ」
三条は花型の麩の浮いた澄まし汁を飲み、優登はお寿司に箸を伸ばす。
綾登は、母親から海老フライをよそってもらい、にっこにこ。
贅沢な時間だ。
「寿司美味い。
兄ちゃんも食う?」
「うん。
海老欲しい」
「えび、すきぃ」
もりもりと食べる兄弟達を眺め、両親も嬉しそうに食事をする。
1年のはじまりの日に、家族揃って食事が出来る。
それがなによりのしあわせだ。
当たり前のことに胡座をかかない。
長男の考え方にとてもよく似た親の気持ちを、兄弟達は知らない。
だけど、子供はなにも知らずにただスクスクと伸びのびと育って欲しいのも、また両親の願いだ。
「おいしねぇ」
「美味しいなっ」
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