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第800話

「みっちゃん、とーとっ、ごちさまでした」 「はい。 沢山食べてくれました」 「お皿運んでくれて、ありがとう」 食べ終わった食器を運ぶと、腕捲りをした父はそう言って皿を受け取った。 あれだけあったご馳走も殆んどが腹の中へと消えた。 どれも美味かった。 思い出しても美味しい。 「ばばいっ」 軽い皿や、箸を運び終わると、綾登はすぐに炬燵の元へと去っていく。 既に炬燵に潜っている次男の反対側に潜り込み、テレビを見始める。 年始特有の番組も良いが、サブスクリプションで多様な番組がいつでも観られるので、幼児でもつまらない感じなくて良い。 「はぅ、みよぉ」 「待ってな。 机拭いたら行くよ」 食卓をウェットティッシュで拭き、ついでに綾登の椅子の下も掃除をしておく。 随分と食べ溢しが減った。 スプーンやフォークの使い方も上手になった。 お箸はまだ難しいが、食べることが好きなので上手く使えなくても口に運んでやろうという意志が強い。 つまりは、伸び代しかないんだ。 大学1回生の時に生まれ、すっかり赤ちゃんではなくなった末弟。 同じ時間を過ごした自分はどうだろう。 同じほど成長出来ているだろうか。 『出来てるだろ』 きっと、恋人ならそう言って頭を撫でてくれるだろう。

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