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第801話
末の息子とお風呂に浸かりながら、その日の話をする。
毎日の楽しい日課だ。
少しずつ言葉も上手くなっていく。
上手に気持ちを伝えられるようになっていく。
それをこうして毎日見ていられるんだ。
特権だ。
「今日のご飯も美味しかったな」
「とっても!」
前髪を後ろへと撫で付けられた綾登の真ん丸のおでのが可愛らしい。
そのおでこのかたちが自分の大好きな人に似ていることが、嬉しい。
兄弟揃って顔立ちは母親似だ。
パーツが似ているというか、良いところは母親の色が濃いように思う。
真ん丸の目も、口角も。
だけど、母親とは違う。
各々の良さを引き立てる顔立ちだ。
「とーとは、なにすき?」
「父さんは…そうだなぁ。
みんな美味しかったなぁ」
「ぜんぶ」
「全部美味しかった。
綾登は?」
「えびふりゃ!」
「海老フライも美味かったなっ」
お節の海老を綾登が好きだからと海老フライにかえ、その他にも家族の好きな物や調理法にかえた。
込められた願いは同じ。
それなら、みんなが嬉しい方が良い。
いつも、妻には感謝ばかりだ。
「あのねっ、たまごのもすきなの」
「あぁ、タルタルソース。
美味しいよな。
美味しいのたくさん食べてお腹もぽんぽこりんだ」
「へへぇっ」
「さ、肩まであったくなってあがろうか」
「はぁい」
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