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第803話

『俺の初夢みてくれよ』 「正宗さんの…?」 『そ。 俺の夢。 だから、もっと意識してくれ』 初夢の基準は様々らしい。 大晦日から1日、1日から2日、2日から3日。 大晦日から1日、つまりは今日は夢を見ていない。 ということは、今日の睡眠で得られた夢を初夢といっても良い。 その夢に、長岡が出てきてくれたらとても嬉しい。 そんなのは当たり前だ。 なら、1つ良いことを知っている。 長岡も知っている、美しいおまじない。 「…じゃあ、服を裏返して寝ます」 『ははっ、そりゃ良いまじないだ。 俺も、するか』 美しい大和言葉のまじないは、今でも繊細に心に根付いている。 繊細だが大胆だ。 それに心を奪われ、生き方が決まった。 歩く道は決して平坦ではない。 それでも、“この道”以外は考えられない。 「いかばかり 思ひけめかも しきたへの 枕片去る 夢に見え来し」 『想ってるよ』 「なら、会えますね」 ふにゃっとした顔で根拠のないことを言い切った。

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