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第806話
キュールの袋に手を伸ばすと、蓬はグーッと伸びをした。
そして、手を追う。
「待てよ。
今やるからな」
つられて柏もやって来た。
やっぱり、キュールにはやばいものが入っているのかもしれない。
開封をせずにこれだ。
この形の物は美味しい物だと覚えているのだろう。
猫は賢い生き物だ。
「よも、ほら」
袋を破ると、すぐに蓬がそれを舐めた。
ペロペロと一生懸命舐めている。
「柏も食うだろ。
ほら」
反対の手にもう1本を持って柏にも差し出すと、こちらはペチャペチャと舌にのせるように食べている。
(動画撮ろうと思ったけど…、まぁ、良いか)
三条に見せようと思っていたのに、両手を塞いでしまった。
どちらかのおやつを一旦手離すことはしたくない。
意地が悪いと覚えさせたくもない。
動画は今度だ。
「美味そうに食うな。
ゆっくり食えよ」
返事をすることもなく、美味しそうに食べる家族をボーッと眺めていた。
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