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第807話
キュールを食べ終えた愛猫達と昼寝をし、炬燵の上のお菓子を頬張りながら部屋へと向かった。
三条の好きそうな本を探すためだ。
粗方貸した気もするが、今だからこそ読んで欲しい本もある。
それと、そろそろなんとかしないと床が心配だ。
暖房の点いていない部屋は冷える。
それでも、雪が身体に当たらない、風が拭き込まないだけで贅沢……は言う。
身体が冷えすぎて末端が痛くなるのは不愉快だ。
部屋があたたまりきる前に居間へと戻るつもりなので、階下から小型電気ストーブを持ってきた。
暖房範囲は狭いが、狭い範囲で速暖性がある。
それに、床面にボタンがありそれが床から離れたら暖房が切れるタイプなので、万が一身体をぶつけても比較的安心だ。
遥登が好きそうっつぅと、これとか…これもだな
それから、この前言ってたやつどこだ
床から冷たいなにかが身体を侵食していくようだ。
炬燵であたたまった分だけ、差が激しい。
愛猫達ではないが、炬燵の中で丸くなりたい。
思っていた場所になく、辺りを探す。
すると、ドアがカリカリっと掻かれる音が聞こえてくる。
長岡はすぐにドアを少し開けた。
その隙間から入り込んでくるのは柏。
蓬が家に来るより前から、こうして長岡の部屋に入り浸っていたのを思い出す。
「待ってろ」
クッションを引っ張ると、ストーブ前の特等席に置き居場所をつくった。
そういえば、学生の頃からこうして2人でこの部屋で過ごす時間は多かった。
この部屋のなにが良いのか柏はよくここで丸くなり眠っていたのを思い出す。
「ほら、ここな」
いくら歳を重ねようと、大人になろうと、実家から一人暮らしの部屋へと住む場所がかわろうと、2人には確かな信頼がある。
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