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第808話
気持ち良さそうに頭を撫でられている柏に目が釘付けだ。
可愛い…
「ばぁば、ありがと」
「どういたしまして」
「みっちゃ!
おとたまま!」
「良かったね。
大切に使おうね」
教員採用試験の合格は伝えてあるが、直接顔を見て伝える意味合いもあり、祖父母の家へとやって来た。
顔を見た瞬間、嬉しそうに顔をくしゃっとさせたのがすごく印象的だった。
自分の夢を叶えるためのスタートラインに立つことが出来る。
たったそれだけのことに、こんなに喜んでくれる人が沢山いる。
まるで自分のことのように嬉しいと思ってくれている。
三条は、それが嬉しかった。
「はう、おいしいよ」
「ばあちゃんの選んだお菓子はどれも美味いよな。
俺も食おっ」
ゼリーとは名ばかりの寒天を摘まむと、キラキラとしたそれに綾登の興味が動いた。
「なぁに?」
「ゼリーだよ。
それは、パイン。
食べる?」
「いいの?」
「良いよ。
かわりに、俺の好きそうなお菓子とって」
ごそごそと茶菓子入れを漁り、ぶどう味を差し出した。
「いっちゃ、きれぇ」
この感性は、優登とそっくりだ。
「ありがとう」
「あーとも、ありがと」
綾登はパイン味、三条はぶどう味を口に入れた。
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