810 / 984

第810話

「2月は、お菓子作りてぇし。 今年は、2段ケーキ作りてぇの。 夢は3段だけど」 大きな欠伸をしながら起き上がると、パキパキっと空気の潰れる音がする。 どれだけの時間同じ体制でいたのか。 更に、グーッと伸びると気持ち良い。 「けーき?」 「そ。 ケーキ。 チョコレートのやつな」 「あーと、すきぃ」 「俺も好き」 優登は綾登の頬を揉みながら、知ってる、と笑った。 寝起きだからか、いつもより素直だ。 その顔を見た綾登は、にこっとする。 「かあい」 「なにが?」 「ゆーとの、おかお」 「格好良い、な」 「かあいいよぉ」 「優登、格好良い、だろ」 ふにふにと揉みながら仲良くじゃれあっている。 優登は三男が生まれる前から思春期に突入しているので、綾登とって“これ”が普通の姿だ。 親に対してちょっと反応が悪くて、少しだけぶっきらぼうで、だけどそれでも隠せない優しさを持っている。 そんな次男が末っ子は大好きだ。 そうでなければ、こんな顔はしない。 それにしても、今からケーキが楽しみだ。 2段のチョコレートケーキ。 一体、どんなケーキになるのだろうか。

ともだちにシェアしよう!