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第813話

あー、と大きく開いた口が、パクッと大福のアイスを頬張った。 「美味そうに食うよな」 『美味しいですから』 自身が食べているカリカリくんより濃厚もっちりな月見大福。 晩飯を沢山食べてきたので、さっぱりな気分だったが、三条の食べているところを見るとなんともそそられる。 そして、同時にふとした疑問が浮かぶ。 「遥登って、月見大福1つくれっつったらくれんのか?」 『正宗さんなら、そうですね』 「なんでだ?」 『なんで…。 正宗さんが好きですから…? 好きな人にはあげますよ。 弟とか』 「2個しかねぇのに?」 『そうですね。 個数は特に気にしませんね』 「へぇ。 愛されてんだな」 ぽわぽわと頬を赤くしながら、またアイスを頬張る姿がとても愛おしい。 こんな時、なんと表現したら良いのか分からなくなる。 愛おしい。 だけど、もっと尊敬の意味もある。 敬愛。 もっと、やわらかな気持ちだ。 言葉が足りない。 気持ちに1番しっくりとくる言葉を知らなすぎる。 だけど、それが嫌ではない。 言葉で表現しなくても、1番伝えたい子には伝わっている。 気持ちを共有する為に存在する言葉がいらない関係。 それに胡座をかくつもりはない。 大切なことは、きちんと伝えていきたい。 けれど、そんな関係が嬉しい。

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