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第826話
「今年はバレンタイン前が連休だから、お菓子焼き放題最高」
「俺も、お菓子食えるから最高」
焼き立てのお菓子の甘いにおい。
リビングいっぱいのそのにおいの中で両親もお菓子とお茶を楽しんでいる。
しあわせだと感じる空気に、食が進む。
「これ美味い。
すげぇ好き」
「マジ?
嬉しい!」
「マジマジ。
コーヒーにすげぇ合う」
「また甘くないやつ?」
兄のマグの中の色を見て、優登は言う。
普段は甘いコーヒーを飲む三条だが、時々そうではないものも口にするようになった。
弟はそれを、大人だと言う。
けれど、本当のことは三条とその恋人しか知らない。
「カンカン」
「ん?
綾登の分もあるぞ。
けど、お返しは5倍な」
「ごぉ?」
「そ。
5倍」
「大人げねぇ…」
「子供だもーん」
「あかちゃん!」
「赤ちゃんは綾登だ。
赤ちゃんの“あ”は綾登の“あ”。
同じだろ」
「はぅ…、そうなの?」
「ほら、信じた」
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