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第829話
あったかいお茶を片手に神社の鳥居を潜る。
その一画の風の当たりにくい場所へ移動すると、改めて受け取った紙袋を見る。
「お、本命」
「本命ですよ」
「ありがとうございます」
「俺こそ、ありがとうございます!
このチョコレート美味しいですよね」
梅酒のボンボンショコラに頬を緩める三条。
甘酸っぱくて、フルーティーなそれが好きだと知っていての購入だ。
そりゃもう勿論。
嫌いな物を贈る理由は1つもない。
「“あの食い方”が好きなんじゃねぇの?」
カァァ…ッと赤くなる顔にニヤけがとまらない。
“あの食い方”。
キスをしながら食う、あの食い方のことだ。
お互いの口内の体温で溶けたチョコレートがえろくて、食べ物をそんな風に扱うといういけない感覚も相まって、すごく興奮する。
それを意識させるように言うと、三条はぎゅっと紙袋を握った。
「…チョコも、好きです」
「チョコ“も”?」
「……食べ方も…だけど、ま…正宗さんが1番好き、です」
思わぬ告白に気持ちが溢れそうだ。
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