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第830話
「すげぇ美味そうだな」
話の流れで、次男のつくったクッキー缶の写真を見せる。
ぎっしり詰まったクッキー。
どれも美味かった。
しかも、有り難いことに自分に用意されたのは1缶だけではなかった。
1缶食べ終わっても、まだ食べられる。
それがすごく嬉しい。
「流石、遥登の弟だな」
「本人もつくるの楽しかったみたいですし、良かったです。
冷凍した残りのクッキー生地は、また焼いてくれるそうなので、そっちも楽しみです」
先にチョコレートの包装を剥いだ長岡は、丁寧に包装紙を畳紙袋へと片付ける。
そして、それからそっと蓋を開けた。
その手の優しさから、愛情が伝わってくる。
愛おしいと思う動きをしている。
つい、じっと見ていると、チョコレートを摘まんだ指が口元へと運ばれてきた。
「あーん」
「え、」
「ん?」
甘い笑顔で小首を傾げられたら、たまらない。
自分の恋人ではあるが、破壊力が強すぎる。
「1口でいけ」
「…では、お言葉に甘えて。
いただきます」
パクッと口で受け取ると、長岡の指が口の端っこに触れた。
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