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第837話
「これで、だいじょぶね!」
「そうだな」
弟達と友人達の応援があれば百人力だ。
なんの変哲のない神社。
商店街に構える姿は、お世辞にも立派ではないかも知れない。
それでも、ここには沢山の思い出がある。
受験のお守りを購入したり、年越しの御神籤をひいたり、神頼みもした。
健康な歯が生えるようにと、石を借りたこともある。
神や仏を信じている訳でもない。
それでも、今でも地域には欠かすことのない場所だ。
撫でると頭が良くなる撫で牛を優登が撫でる。
それを見付けた綾登が、自分も撫でたい!と次男の制服を引っ張っている。
「分かったよ。
ほら、頭な」
「よしよし」
「ついでに悪いところも撫でとけ」
「どこ?」
「怪我してるところねぇの?」
「ないっ」
「絆創膏好きなくせに」
楽しそうな弟の話を聞きつつ、三条も牛の頭を撫でた。
頼れるものはなんでも頼れ。
それは恋人の言葉だ。
藁でも、蜘蛛の糸でも。
「冷えてきたら帰ろうぜ」
「はぅ、てぇて」
「ん、手ぇ繋ごうな」
いつも恋人と歩く道を、小さな弟と手を繋ぎ歩く。
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