838 / 984

第838話

「おかえりなさい」 「ただいま」 長岡が部屋へと帰宅すると、ふにゃふにゃした笑顔が出迎えてくれた。 「どうだった。 緊張したか?」 「しましたよ…。 そりゃもう、すごく」 「ただの面談だろ」 「経験者だから…」 靴を脱ぐと、目の前のサラサラした髪をぽふっと撫でた。 「嘘だよ。 大変よく頑張りました」 目の前の頭はすぐに振り返り、此方をおずおずと見た。 その顔には『ご褒美が欲しいです』と書いてある。 「頑張ったな。 お疲れ」 「正宗さんも、お疲れ様でした」 細い身体ではあるが、きちんと男の身体だ。 それをしっかりと抱き締める。 もうすぐ春だ。 雪が溶けたら、あっという間に春になる。

ともだちにシェアしよう!