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第843話
愛車から降り、部屋を見上げるとカーテンの隙間から僅かな灯りが漏れている。
たったそれだけ。
それだけのことに、脚が軽くなる。
階段を1番上まで登り、鍵を差し込む。
その、ほんの数秒さえ惜しい。
ガチャッと解錠の音に、直ぐ様ドアの隙間へと身体を滑り込ませた。
そして、すぐに足音が此方へと向かう。
「ただいま」
「おかえりなさい。
ご飯、もうすぐ出来ますよ。
お風呂ももうすぐ沸く頃です」
「美味そうなにおいしてんな。
煮物だな」
「はい。
肉じゃがです。
よく分かりましたね」
靴を脱ぎながらも、視線は三条を映す。
「ご飯とお風呂、どっちにしますか?」
「飯、の前に遥登」
独占欲を映えさせた手をとると、引き寄せた。
すぐに動いてしまう、軽いからだ。
空気が動くと清潔なにおいがする。
三条のにおいだ。
「イチャイチャすっか?
それとも、イチャイチャ?」
「どっちも同じじゃないですか」
「じゃあ、性的なイチャイチャと心理的なイチャイチャ」
「またそういうことを…」
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