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第856話

あたたかいお茶をもらい喉を潤す。 その飲み物を用意してくれた本人は、トイレだ。 ……すげぇ申し訳ないんだよな… 自分はすっきりと射精し、恋人はトイレで自己処理。 …… 本当にこれで良いのだろうか。 洗い物でもして待つべきなのだろうか。 ………… 廊下へ出ると、トイレの扉で足をとめる。 来てしまったが本当に良いのだろうか。 だけど、早く声をかけないと終わってしまう。 自分ばかり気持ち良い思いをしておいて。 1度だけ今来た廊下を見て、それからまたトイレのドアを見詰める。 その奥から微かに粗い息遣いが聴こえていた。 「あ、の…」 「…どうした?」 なんて言うべきか。 上擦った声に、後込んでしまう。 「……そうでは、なくて…」 僅かにドアが空くと、長岡が少しだけ顔を見せた。 「はる?」 「あ…、すみません…」 「手伝うつもりか?」 「……駄目、ですか…」 「そういうところな」 ドアの隙間から伸びてきた手が自分の手を引っ張った。

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