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第873話

「まだ寒いけど、春になってきたよな」 田上の声に頷く。 まだ寒い雪国には雪が残っている。 それでも、梅は咲き、人々の動きも活発になってきている。 そんな微かなところから春を感じることが出来る。 「引っ越し業者に頼むと高けぇよなぁ。 家電の設置も頼もうと思ってたんだけど、結構埋まってるって言われちまってさぁ」 「手伝うよ。 俺は配属先決まらないと決めらんないから4月に入ってからだし どうせ暇だしな」 「マジ? じゃぁ、頼もうかなぁ」 会話も春のものへとかわっていく。 みんなが待ち望む春。 だけど、少しだけ寂しくなってしまう季節だ。 「じゃぁ、じいちゃんから軽トラ借りるからガチで手伝ってもらっても良い? で、蕎麦食おうぜ」 「細く長く? ガッツリ二郎系にしようぜ」 「ははっ、それ良いな! 二郎系蕎麦!」 「蕎麦違いだろ。 つぅか、初日から部屋がくさくなるわ」 ケラケラ笑う声は、高校生の時となにもかわらない。

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