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第906話

あたたかい湯に浸かっていると、肩に触れられた。 「冷えてるじゃねぇか」 「いや…、そんなことは…」 長岡は自分に寄り掛かるように誘導してくる。 だけど、骨ばかりで体重がかかれば痛いだろう。 細くても背丈の分は体重だってある。 セックスで疲れているのはお互い様だ。 「今日は甘えんだろ。 なら、甘えろって」 その声に振り返れば、甘い笑顔が向けられる。 蕩けそうなほど好きな顔だ。 湯温であたたまった手が頬から耳を包み込み、優しく擦る。 さっきの温度がぶり返してしまいそうなほどの甘さに、ゆっくりと身体を倒した。 「ははっ、良い子」 「重くないですか…?」 「重くねぇよ」 「骨当たって、痛くないですか…?」 「ん。 大丈夫」 無茶苦茶なお願いをしたって、こうしてグズグズに甘やかしてくれる優しい人。 その人の心音が胸に触れた頬から伝わってくる。 生きてる音。 好きだと伝えてくる音。 安心し目を閉じた。 この人の隣は、こんなにも息がしやすい。 駄目押しに頭を撫でられたら、もう駄目だ。 「正宗さん」 「んー?」 「呼んだだけです」 「遥登に名前呼ばれんの嬉しいから、もっと呼んで良いぞ」 「正宗さん」 「ん、遥登」 すっかり骨抜きだ。

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