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第910話
目を覚ますとスマホへと手を伸ばす。
そして、ふと傍らの体温を思い出した。
……ガチで寝てた
昼寝と思ったが、しっかり寝てしまった。
「……んん、」
身体が動いたことで目を覚ました三条はぽやぽやした視線を動かし、自分を見る。
そして、すぐさま頭をフル回転させ、現状を思い出していく。
「おはよ、ございます。
すみません。
寝ちゃってました…」
「俺も寝てた。
遥登あったけぇからな」
この休日の昼過ぎに寝て、起きたら夕方だった時のなんとも形容しがたい気持ちはなんなんだろう。
休日でなければ出来ない行為への贅沢感と、睡眠に時間を使ってしまった勿体なさ。
まぁ、今回ので言えば前者だ。
まして、恋人を抱き締めながらの昼寝なのだから文句はない。
にしても、欠伸がとまらない。
「飯にはまだ早ぇな。
なにする?」
「…このままが良いです」
「このまま?」
にんまりしてしまう口元もそのままに、乱れた髪に手櫛を通す。
サラサラした髪に触れつつも、本当に触りたいのはその本体。
三条だ。
肉付きの悪い頬も、指の背ですりすりと撫でる。
愛猫達のように、されるがまま気持ち良さそうに目を細めるのが愛おしい。
「かわい」
「格好良いが良いです…」
「格好良いのは勿論だろ。
俺の恋人だぞ」
ふにゃぁと表情筋の力を抜くと、それはそれは嬉しそうな顔をした。
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