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第917話

公園の駐車場に停止すると、アイスを手渡した。 「ありがとな。 手ぇ、冷たかったろ」 「いえ。 平気ですよ」 「本当かぁ?」 楽しそうな声色につられて口端がゆるゆるしてしまう。 というか、長岡と一緒にいる時は殆んど口端がゆるゆるか。 これに関しては表情筋が緩いんだ。 キリッとしまらない顔というか。 けれど、そんな顔も好きと長岡に何度も言われてきたので前よりはコンプレックスとは思わなくなった。 自分の嫌いなところは、相手の好きなところかもしれない。 そんなありふれた言葉を本当にそうかもな、と思うくらいには長岡にぞっこんだ。 「卒業式、出来んだって?」 「はい。 今年から大会場をまた借りてするみたいです」 感染症の影響で2年ぶりの卒業式。 それでも、このタイミングで感染症にかかれば赴任先の学校への挨拶やらに行けなくなってしまうので気は緩められない。 逆を言えば、そのタイミングにだけ気を付ければ良い。 流石に赴任早々、病欠は不安しかない。 避けられるものは避け、元気にいたいのが願いだ。 だけど、友人達と直接会えるのは楽しみだ。 千佳ちゃんに直接会うのはいつぶりか。 田上とは、何度会ったったって嬉しい。 「楽しめよ」 「はいっ」

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