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第918話

「アイス美味いな」 「はい。 美味しいです」 「学生の遥登とアイス食えんのも最後かもなぁ」 「寂しいですか?」 隣を覗くと、なんとも言えない顔をした長岡と目があった。 「生意気になりやがって」 冷たい手がするりと伸びてくると、額に触れる。 アイスを握っていたせいでひんやりどころか冷たい。 その温度に気を取られていると、目の前が暗くなった。 ──チュ 「伸び代しかねぇな」 濃くなるにおい。 楽しそうな顔が目の前にある。 「キスした…」 「したよ?」 「え、っちだ…」 「…えっちって。 もっと、やぁらしいのもしてきたろ」 した。 舌を舐められるのも、上顎を舐められるのも。 唾液を飲んだり、飲まされたり。 だけど、額へのキスだってえっちだ。 「顔真っ赤。 なに考えた? 教えてくれよ」 「…秘密です」 「俺にも秘密なのか?」 「……秘密です」 いつの間にか絡め取られた手をしっかりと握りながら、くだらない攻防を繰り返した。

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