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第932話

まぁまぁ、少し休んでから帰れば良いですよ、と言われるがままにお茶に誘われコーヒーを飲んでいるが、本当に良いのだろうか。 なんかもっとこう…挨拶とか…、挨拶を終えたからコーヒーを飲んでいるのか。 苦味に頭が冷静になるのかグルグルと考えてしまう。 分かるのは、五十嵐と古津の2人にとって興味の対象であることと、長岡の機嫌の良さ。 特に長岡はそれを隠しているみたいだが、空気がそうだと言っている。 長岡が隠すならと、自分も緩みそうか口元をきゅっと引き締めコーヒーをいただく。 その時、準備室の内線が鳴る。 身体を捻り、電話を受ける五十嵐の顔がどんどん曇っていく。 「…はい…、はい。 今から確認に行きます。 はいら失礼します。 …すみません。 ちょっと、職員室行ってきます…」 「なら、俺も少し席を外しますね。 三条先生、今日はお疲れ様でした。 一緒に働けるの楽しみにしてます。 それと、あんな長岡先生はじめて見ました。 とても大切にされてるんだなって」 「…?」 「あ、もらったお菓子があるので、これもどうぞ。 では、長岡先生少し席を外しますね」 「はい」 手をヒラヒラと振る背中を見送り、準備室へと戻ると長岡がポン、と椅子を示した。 「ゆっくりしていってください。 三条先生」 「先生まで…。 俺、まだ大学に籍ありますし…」 卒業式を終えても学期がかわるまでは大学生であることにかわりはない。 そう伝えれば、ふわっと長岡のにおいがコーヒーのにおいに混じる。 耳に寄せられた口元から発せられる声は教師の時より気怠げ。 「なら、はぁると」 「っ!」 すぐに顔は離れ、何事もなかったかのようにまたコーヒー口にし始める。 正宗さん、ご機嫌だ…

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