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第940話

『あ、思い出した。 引っ越しどうすんだ?』 「あー、4月になってからです。 荷物は車で運ぶので、とりあえず必要な物を移動させて、カーテンとか大物はゴールデンウィークとかで揃えたら良いかなって」 4月から新生活の晩として住めるように契約はした。 その為には、掃除をしたり、部屋を綺麗に保つ為に出来ることは4月に入る前にしてしまいたい。 掃除用具は行きしなき買えば良いので、とりあえず行くだけ行って準備か。 『ここ来れば良いだろ。 服もあるし、食器もあるし。 風呂もトイレも使い慣れてんだし、飯だって食えるし』 「いや…、それは甘えすぎでは…」 『給料は後払いだぞ。 1ヶ月は持ってる金で遣り繰りすんだから、使えるもんは使っとけ。 立ってれば親も使えって言うだろ』 「それは…そうですけど…」 一方だけが甘えるのは申し訳なさ過ぎる。 思わず口がきゅっとする。 『指に嵌まってるのはなんですか?』 「…指輪です」 『なんの?』 「……人生の交換…」 『なら、良いだろ。 やることやってる関係なんだから』 「そ、んな、生々しい言い方……」 『ふとんどうすんだ?』 床で寝るつもりだったのだが…。 画面の向こうの長岡はにっこりとした表情のままだ。 これは、ガチだ。 『すぐにふとん買うのか?』 「…………お邪魔させていただきます」 『ん。 おいで』

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