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第954話
ケーキをオーブンで焼いてる間に洗い物をする。
バターを使うと洗い物がベタ…としてめんどくさいが、丁寧に。
踊り飽きた綾登は休憩だと足元に寝転んでいる。
「転がって来んなよ。
怪我したら、痛いのは綾登だからな」
「はーい」
余ったレモンをギュッと搾り、ガムシロップで甘みを足す。
更にお湯を注ぎしっかり混ぜた。
甘くて爽やかなにおいが立ち上がる。
炭酸水で割ってレモネードも美味しいが、綾登にはこっちの方が良いだろう。
「綾登、飲む?」
「ん」
小さな手がカップを受け取ると、じっと中を覗き込む。
それから、ふーっと息を吹き掛けてから舐めるように少しだけ飲んだ。
「おいしっ。
あちくない」
「熱いと飲めないもんな」
先日、ついあったかい飲み物を母親のカップから飲もうとして、自分のいつもの温度より熱いそれにびっくりしてからこの飲み方をしている。
余程熱かったんだろう。
兄も熱い物に敏感だが、綾登も中々だ。
まぁ、幼児で口の中も皮膚が薄いのもあるのだろうが。
次第に甘いケーキのにおいが広がっていく。
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