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第955話

オーブンの前で座り込んでお菓子を食べたり飲み物を飲んでいたのだが、ケーキが焼き上がると上にかける甘いコーティングをつくりだす。 そのまま焼きっぱなしも素朴で良いが、この白いアイシングがかかっているとなんか美味しそうに見えるから不思議だ。 粉糖にレモン汁を混ぜただけの甘くてレモンの味が爽やかな味。 これがかかってこそウィークエンドシトロンだとさえ思うから不思議だ。 「ねぇ、それ、なぁに?」 「グラス・オ・シトロン」 「ぐお?…とんとん?」 「美味いやつ。 手、貸してみ」 パッと開いた小さな手にレモン味のアイシングを垂らす。 「舐めてみ」 「いただきます」 ぺろっと手を舐めたが、手のひらを拭いてからの方が良かったか? まぁ、もう遅いが。 その瞬間、綾登の表情がパッとかわった。 「っ!」 「美味い?」 「うまーい!」 そりゃ、砂糖が甘くて美味いだろう。 大体、世の中はカロリーの高いものこそ美味いんだ。 「おかあり」 「もう少しだけな」 「おいしいねぇ」 こんなの母さんに見付かったらマズい。 だが、綾登は嬉しそうだ。

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