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第956話

長岡から送ってもらい、自宅へと帰ってきた。 いつも甘やかしてくれる恋人は、もうこうやって送る機会もなくなるのか、と感慨深そうに言っていた。 そうなることを望んではいるが、なんだか少し淋しそうでもありなんとなく時の流れを惜しいと思う気持ちも理解出来るようだ。 「ただいま」 「おかえりぃ」 ひょこっと顔を顔を出したのは綾登。 ニマニマしながら脚に抱き付いてきた。 「お、どうした」 「んー、へへっ」 なんだ?と優登へと視線をやると、立ち上がった。 足を止める兄の前を通り過ぎ、冷蔵庫へ。 すると、綾登も着いていった。 にこにこしているのは両親も。 「落とすなよ」 「きょーつける」 なんだ?と覗き込むと、綾登の手には美味しそうなケーキ。 これは優登の作るウィークエンドシトロンだ。 マットなアイシングでお洒落になっている。 「お、美味しそうなケーキだな」 「どーぞ!」 「え? 俺も食って良いの?」 「はぅのだよ」 「俺の?」 就職、勤務先決定のお祝いはしてもらっている。 優登が大きなタッパーにティラミスを作ってくれて、スプーンで掬いながら食べた。 あれも美味しかった。 自宅で作ると甘さが好みに出来るのが大きい。 甘いがクドくなく、コーヒーの苦味のしっかりとしたティラミスだった。 今、思い出しても美味しい。 「俺がもらって良いの?」 「そりゃ、良いよ。 綾登と作ったんだよな。 で、なんて言うんだっけ?」 「はんぶん、ちょーだいっ」

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