960 / 984

第960話

なんとなく、家が離がたい。 感染症がなければとっくに一人暮らしをしていたはずなのに。 2年も甘えてしまったのに。 「明日でも好きなときに食えば。 また作るし」 「チョコレートケーキも?」 「なに? 食いたい?」 優登は満足そうに笑った。 そりゃ、食いたい。 自分好みのケーキなのだから。 食べ納めというのは大袈裟だが、仕事がはじまれば、暫くは帰ってくるつもりはない。 勤務が20時に終わるとして、帰宅に20分 、無理な距離ではない。 ただ、今とは異なる時刻に帰宅し、家族の生活リズムを崩すのはしたくない。 それに、やっぱりいつまでも甘えていられないという意識もある。 「作るよ。 春休みで暇だし」 「ほんとか。 嬉しいな」 それでも、優登と離れてしまうのはやっぱり少し寂しい気がする。 優登が生まれてからずっと一緒に生活してきたんだ。 「明日は朝からゲームするか」 「ガチ? 嬉しいんだけど!」

ともだちにシェアしよう!