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第965話

「優登ー、出来た」 「今行く」 課題もそのまま、ペンもその場に置いただけで優登は台所へと顔を出した。 「おにぎりもある」 「野菜似てる間、暇だったからな。 沢山食え」 にっこにこで手を洗っている隣で皿を持って先に机に行く。 戻ってくるとお茶の準備をしているから抜かりがない。 本当にしっかりしてる。 ついこの間まで小学生だった気がするが、もう高校生。 本当に早いなと思ってしまう。 「どうした?」 「いや、俺することある?」 「座ってて良いよ。 つか、食ってて良い。 俺が好きでしてるんだし」 「んじゃ、見てよー」 秒針が動くから長針が動く。 そんなのは、当たり前だ。 だけど、あまりにも秒針の動きは小さくてほんの僅かな動きだから気付けない。 振り返った時に、長針が動いていてやっと気が付くもの。 だけど、見ようとすれば見ることが出来る。 この目も、スマホのフォルダも、それを確かに記録しているから。 「やりにく…」 「気にすんなって」 今度、にこにこするのは兄の方だ。 「ほら、あっついから気を付けろよ」 「ありがとう。 じゃ、食おう」

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