971 / 984

第971話

「うれしっ」 「綾登、良かったね」 「うんっ!」 スパゲッティにウィンナー、サラダにミネストローネ。 昨日のおかずの残りと、これまた残りのご飯で作った焼きおにぎり。 食べ盛り2人も食べごたえのある量はある。 「いやぁ、遅くなってごめんね。 綾登の食べたかったご飯なのに待たせちゃったね」 「いいよぉ」 そんなことより早く食べたい綾登はパチッと手を合わせて、家族を見回した。 「いたあきます!」 「いただきます」 そして、先の丸いフォークでウィンナーを刺すと大きな口で頬張った。 「んー!」 にこにこと見守る両親も料理に手をつける。 この当たり前がもうすぐ毎日のことではなくなる。 不思議だ。 当たり前なのに、当たり前じゃなくなるんだ。 はじめての経験を前にそんなことを思う。 けれど、スパゲッティは美味しいし、ウィンナーも美味しい、ミネストローネも美味く出来た。 次第に食事に夢中になりそんなことは頭の片隅へと追いやられた。

ともだちにシェアしよう!