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第974話

駅へと歩く道すがら、いつものサクラ猫を見付けた。 日の当たるところで脚を投げ出しのんびり日向ぼっこ中。 ヒラヒラと手を振ってみるも、少しだけ目を開けて誰かを確認してからまた目を閉じた。 「猫だ。 可愛い」 「可愛いよな」 歩き慣れた道を弟と歩くのは少し違和感がある。 だって、ここは長岡の部屋を訪れる時に歩く道だ。 大学が見える距離なので学生は利用頻度の高い道だが、生憎、2回生の冬からはオンライン授業ばかりだった。 頻度の話で言えば、大学関係で利用することは少なかったように思える。 「あ、駅だ」 「分かった? この道真っ直ぐ下るから分かるか」 「曲がるとこさえ間違えなきゃ行ける。 で、コンビニは?」 「ん? あっち」 今来た道を指差すと優登は眉に皺を寄せた。 「反対方向かよ…」 「まぁ、まぁ。 スーパーも教えるし」 「飯、どっちで買うの?」 「優登の食いたい方。 あ、美味い定食屋もあるよ。 中華丼美味い」 「うわ。 迷う」

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