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第976話

「んまい」 「俺が作ったんじゃないけど、沢山食べな」 「1人で飯、寂しくない?」 「ん? 俺は平気だよ。 オンライン授業で昼は1人だったし」 買ってきたおにぎりを頬張りながら優登を見ると、少しだけ口をきゅっとした。 寂しいのは優登なのだろう。 夏休みも春休みも俺がいた。 けれど、もう数日後からはそうじゃない。 たった1人で家で昼を過ごすんだ。 そんなの、ほぼはじめてだ。 高校生ではじめのことをする。 「優登こそ、1人で平気か?」 「高校生に言う台詞じゃねぇだろ…」 「そうか? 俺の弟だろ」 頭をわしゃわしゃと撫でてやる。 いつでも出来たこれも、暫くは出来なくなる。 自分の選んだことに対して後悔や悔いはない。 寂しさも。 だけど、家族と離れて暮らすと言う感覚がまだふんわりしている。 きっと離れてから恋しく思うのが家族なんだろうな。 「お菓子食いに帰るし」 「絶対な」 「晩飯も食いに帰る」 「うん」 「あ、ゲームはオンラインでもしような」 「うんっ」 長岡が気に掛けてくれていたことに少しだけ申し訳なさもあった。 忙しいのに時間を都合してくれている、時間を合わせてくれているって。 けど、例えそうだしても、それは本当に本人がしたくてしているんだと解った。 それも、大きな家族への愛だと。

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