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第979話
新居に持っていくのになにが必要で、なにがいらないか分からなくなってきた。
充電器は新しいのを部屋に置いてきたから置きっぱで良いし
今使ってるので持ってくやつは…
ゲーム機か
優登とともやるし持っていきたいな
取りに帰ってくるか
着々と進む準備のわりに部屋の物が減らない。
いや、本は減った。
それと、ホワイトデーのお返しのキャンディポット。
すっかり恒例になった飴は、少しずつ大切に食べ、キラキラ輝く飴の瓶は洗浄して部屋に飾っていた。
増える度に思い出す甘い思い出。
にやける頬をそのままに机の上をウェットティッシュで拭いているとスマホがメッセージの着信を知らせた。
届いたメッセージ通りに窓の外を見ると長岡がいた。
カーテンが開いたことに気が付いたその人は、手のひらをヒラヒラと動かす。
月曜日まで会えないと思っていた恋人だ。
こっそりと家を抜け出し道路へと出ると、今度は『よ』とでも言うかのように手を上げた。
「どうしたんですか」
「いや、やっぱ大学生の遥登に会っときてぇなぁって思ってな。
忙しかったか?」
「いえ、そんなことはありません。
会えて嬉しいです」
「そうか。
良かった」
柔和な笑みに釣られ、隣に並ぶ。
「良いのか?」
「はい」
「なら、デートしようぜ」
「はいっ」
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