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 その日は、明け方から雨が降っていた。  朝トイレに行くと原くんはおらず、交通機関の遅延かなと考えた。  昼休みにも来ないので、どうやら欠席らしい。  少し寂しく思いながら仕事をしていると、帰りのホームルームが終わった頃に、彼がやってきた。 「あれ、原くん。きょうは休みなのかと思っていました」 「……すみません、来なくて」  絞り出すような声でつぶやくと、さっさとカーテンを引き、ベッドに腰掛けた。 「石田先生。僕もうこれ、やめたいです」 「……そう。もう平気そう?」 「平気、じゃないけど、平気です」  涙声で、太ももの上にゆるく握った拳が、振えている。 「どういう意味かな」 「もう、ひとりでできます。ムラムラしたら、ちゃんとちんちん擦ってイッて、すぐ寝れるから。でも、……」  言葉を切る。唾を飲みこみ、か細い声で言った。 「夢に石田先生が出てきて、辛い」  悲しそう、恥ずかしそう。  僕は、ぽんぽんと頭を撫でながら尋ねた。 「どんな夢?」 「エッチな命令をいっぱいしてきて、おれは恥ずかしい格好で、クラスのみんなが見てる前でオナニーしたり。ちんちんいじくって気持ちよくなってるところをいつものカメラで撮影して、それが授業の全校放送で流されたり」 「それは恥ずかしいね」 「それで、石田先生は腕組みしながら優しく言うんです。ちゃんと上手にマスターベーションできるか、みんなに見てもらってくださいね、って。でもおれ、見てもらいたいの、先生だけなんです」  顔が真っ赤だ。  涙がこぼれないよう、必死にこらえている。 「その夢の中で君は、クラスメイトの前で、ちゃんとできていますか?」 「はぃ。泣きながらみんなに見せてるところを、石田先生が教室の後ろで見てるので、それで興奮して」 「夢の中で、みんなに見せるのは恥ずかしかったですか?」 「……恥ずかしいです。ちんちんちっちゃいし、皮あるし、自分でいじってきもちくなって、お尻にも指入れてて、ヘンタイみたいで」 「全校放送は?」 「みんな見てて、恥ずかしいのに勃っちゃって、その映像見ながら自分でいじくるんです。映像と同じことして、皮剥いて、おしっこ出るところを爪の先でチロチロチロッて」 「クラスメイトは、原くんが自分の映像を見て興奮してオナニーをする姿も、見てるんですよね? それについては何か言っているの?」 「ヘンタイって言われて、みんながおれのちんちんの前に寄ってきて、裏筋までジロジロ見られます。その恥ずかしい姿を石田先生が見てるって思うと、また勃っちゃうんです」  そこまで一気に話すと、原くんは口をつぐみ、下を向いてしまった。 「そういう夢を見るのが嫌なんだね?」 「はい。石田先生に見られて興奮するのが恥ずかしくて、だからもう、……やめたぃ、です」 「でもね、原くん。いま君、この話しながらどんどん勃起してるよ?」  バッと上げた顔が、真っ赤に染まってゆく。 「みんなの前でマスターベーションしてみたい? そういうエッチな命令されたい?」 「いやです。エッチな命令、もういっぱいされました」 「ファミレスとか、図書館とか、おちんちん出しちゃいけないところで、いっぱいオナニーしたよね」 「はぃ」 「夢の中でどんな風にしてたのか、思い出して見せて? そしたらもうやめてあげる」

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