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一番の焼きもちは誰
「みつきさんママめっけ!」
奏音が大きな紙袋を両手で大事そうに抱え、にこにこの笑顔で姿を現した。
「なんだ、後を追いかけてきたのか」
「うん。だって、早くママに会いたかったんだもの。これね、かなたが作ったんだよ」
満面の笑みを浮かべ紙袋を差し出した。
「奏音、見ないうちに背が伸びたな」
遼成が声を掛け頭を撫でてやろうと手をすっと差し出したら、びくっと肩を震わせ、光希の後ろに隠れてしまった。
縣一家組長として東京から離れる訳にはいかず、奏音とは数えるくらいしか会っていない。だから今も他人行儀でよそよそしいまま。だから"りょうパパ"じゃなく、いまだ、"りょうおじちゃん"のままだ。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに」
クスクスと笑いながら、光希が紙袋の中を覗くと新聞紙にぐるぐると巻かれたマグカップが四つ入っていた。手に取ってみると大きさも形も違う。色味も違う。手作りだとすぐに分かった。
「底見て」
「底?」
「うん」
言われたように底を見ると、
みつきまま
りゆうぱぱ
りようぱぱ
かなた
とそれぞれ文字が刻まれていた。小さい文字が難しくて小さい文字でなくなっていたが、
「一生懸命作ってくれたんだね。ありがとう。ママ嬉しい」
感極まり光希が泣き出した。
「たく、泣き虫なんだから」
「そういう龍だって泣いてる癖に」
「目にゴミが入っただけだ」
遼成は表情ひとつ変えなかった。でも、口角が微かに上がっていた。
「たまたまテレビを見ていたら会津美里町にある窯元が放送されていて、ママたちにプレゼントしたい、そうオヤジに頼んだんだ」
奏音を心配し根岸が様子を見に来た。伊澤ももちろん一緒だ。
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