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一番の焼きもちやきは誰だ
縣家の風呂は一般家庭のサイズより大きい。広い湯船の中で、奏音はガチガチに緊張し、まるでロボットみたくなっていた。
「兄貴がビビらせるから。可哀想に」
「まだ、何もしてないぞ」
「ほらやっぱり、これからするつもりだったんだ」
「な訳あるか」
遼成がちらっと隣にいる奏音に目を遣った。
「俺たちの息子になる。それで本当にいいのか?奏音がどう思っているかそれが聞きたい。心配するな、怒ったりしないから。約束する」
怖がらせないようににこっと優しく微笑み掛けた。
優男の外見からは予想もつかないが遼成は昇龍会きっての武道派だ。最強の男も、妻の光希の涙と、妹のように可愛がっている未知の涙と、子どもたちの涙にはめっぽう弱い。
「かなたのこと、ママ、いらない子じゃないよっていってくれたんだ。それがうれしくて。ママもりゅうパパも、かなたのこと好きだっていってくれた。かなただって、ママとりゅうパパ大すきだよ。ずっとずっといっしょにいたい。おじちゃんはかなたのことすき?」
目をうるうるしながら見つめられた。
「まぁ、他の子どもよりは可愛いかな」
「それ答えになってない。相変わらず素直じゃないんだな兄貴は。好きだって言えばいいのに」
龍成に痛いところをつかれ、頬を赤らめる遼成。それを隠すようにお湯を両手で掬うと、顔を洗った。
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