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一番の焼きもちやきは誰だ
風呂から上がってきた奏音は光希と手を繋ぎ家の中をあちこち探索して歩いた。客間を覗くと布団が三つ並べてあった。月明かりの綺麗な夜だ。
「ママあれなに?」
「蚊帳だよ。皮膚が弱い奏音が蚊に刺されてもし万一痕が残ったら大変だからって、おじちゃんが準備してくれたんだよ」
「おじちゃんやさしいね」
「だって奏音のお父さんだもの」
生まれて初めて見た蚊帳に興味津々の奏音は早速中に入った。ごろんと真ん中の布団に寝転がると、あちこちキョロキョロと眺めた。
「まるで海のそこにいるみたい。ひみつきちみたいだね」
「そうだね。あれ?パパたちは?」
「じゃんけんしてたよ。どうしてもゆずれい男のたたかいがあるんだって」
「そうなんだ。また、じゃんけんしているんだ」
昨日も、その前も、ふたりはじゃんけんをしていた。誰が奏音の隣で、誰が光希の隣で寝るか。はたから見たらどうでもいいことだが、ふたりにとっては一戦一戦が真剣勝負だ。
「毎日ママといっしょにねれるからかなたすごく楽しみにしていたんだよ。きょうはパパがかなたとのとなり。明日はおじちゃんがとなり」
「嬉しい?」
「うん!」満面の笑みを浮かべると、
「ママはここ。早く、早く」
隣をぽんぽんと叩いた。
「あ~~お前らズルいぞ」
「独り占め禁止、抜け駆け禁止って言わなかったか?」
浴衣姿の龍成と、遼成が蚊帳の中に入ってきた。
「ふたりとも大人げない」
「ママはみんなのママだ」
「兄貴の言う通り」
龍成が奏音の背中側に、遼成が光希の背中側に、それぞれ横になった。
「風呂に入って来るからパパたちに遊んでてもらってて。ちょっと遼」
遼成は光希の背を抱き締めると早速項に顔を埋め、唇を這わせてきた。
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