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いいか奏音、逃げるが勝ちだ

「見るもの聞くもの全部はじめてだ。そりゃあ大人だって知らない所に連れてこられたら緊張するからな。光希、拗ねてごめんな。大人げがなかった」 「分かってくれればいいよ。遼、俺もごめん、龍とその……」 赤くなったまま口籠ってしまうと、くすりと笑った遼成が、光希の頬をそっと撫でてきて。次にそこにちゅっと口づけをしてきた。 「今こうして光希と二人きりでいれる。甘えられる。だからチャラだ」 「ありがとう遼」 光希が見つめると、遼成はニコッと優しい微笑みで返した。 「あ、みつきママだ!」 家族連れに混じり遼成と一緒に歩いてくる光希の姿を奏音はすぐに見つけた。 「坊っちゃん走ったら危ないです」 「転びます」 駆け出した奏音をコウジと玲士が慌てて追い掛けた。 スーツの上着を肩に担ぎ、堂々とした足取りで颯爽と歩く遼成の姿を、奏音は目をキラキラと輝かせ羨望の眼差しで見つめた。 「りゅうパパもカッコいいけど、りょうおじちゃんもカッコいい」 「奏音も随分と嬉しいことを言ってくれるじゃないか。お利口さんにしていたか?」 「うん。じゃない、はい!」 背をぴんと伸ばし大きな声で返事する奏音を、遼成はくすっと微苦笑し、目を細めて見つめた。 「何に乗るんだ?」 「かんらん車。りゅうパパとりょうおじちゃんといっしょがいい」 「マジか」 「いや~この年で、観覧車は……」 「行くよ」 奏音は困惑気味の遼成と龍成の手を掴むと、真っ直ぐ観覧車に向かった。 「姐さん、龍兄貴大丈夫ですか?」 「龍成は高いところが苦手だけど、奏音のためにいつかは克服しないといけない」 光希は込み上げてくる笑いを必死で我慢した。

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