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奏音には敵いません

「奏音、悪いもう一回言ってくれ」 「りょうパパ」 奏音はにっこりと微笑みかけた。その表情はまさに天使。感極まり、涙ぐむ遼成。 「兄貴良かったな。あ~~気持ち悪い。死ぬかと思った」 「龍、大丈夫?」 光希が隣に座り広い背中を擦ると、 「み~つ~き~、助けて~~」 甘えたような声を出して膝の上にごろんと横になった。 「少し寝る。兄貴、奏音を頼む」 「は?」 「やっと親子になったんだ。がんばれー」 ひらひらと手を振った。 遼成の手をそっと握る奏音。不安そうに見上げた。 「心配するな。少し横になったら元気になる。奏音、何に乗りたい?」 「りょうパパとなら何でもいいよ」 「そうか。じゃあ、行こうか?」 「はい」 「奏音、敬語はなしだ」 「けいご?」 不思議そうに首を傾げる奏音に、 「奏音には難しかったな」 くすっと柔らかく笑んだ。 メリーゴーランドに乗るために列に並ぶふたり。後ろに並んだ家族連れがチラチラと遼成を見ては、回りにいる強面の黒ずくめの男たちにびくびくしていた。生きた心地がしないとはまさにこの事だ。

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