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奏音には敵いません
「光希、腹減った」
「遼と奏音が帰ってきたら食べよう」
「えぇ~~待てない」
唇をつまみ、足をバタつかせる龍成。30歳になっても、光希の前ではでっかい赤ちゃんのまま。構ってちゃんのまま。一向に成長していない。
駄々をしたり拗ねたり、いじけたり、それがまた可愛くて。駄目だとは思いながら、つい甘やかしてしまう光希。
「もうしょうがないな。おにぎり一つだけだよ」
「よし、やった!」
龍成の顔がたちまち笑顔になった。
「じゃあ起きて。寝て食べる人いないよ」
「ここにいます」
悪びれる様子もなくにやっと笑い、右手を挙げる龍成。
これにはさすがの光希も開いた口が塞がらなかった。
「テツ」
光希が名前を呼ぶとテツが大きなトートバックを、もう一人の舎弟がクーラーボックスを運んできた。
「使って悪いけどおにぎりをとってもらってもいい?」
「はい、姐さん」
「テツ、いっぺんにはご飯を食べれないから今のうちに腹ごしらえしとおくといいよ。おにぎりも飲み物もみんなの分あるから」
「姐さん、ありがとうございます」
テツとその場にいた舎弟たちが一斉に腰を九の字に曲げた。
まどかに顎でこき使われ逃げ出した舎弟を光希は快く迎え入れ、テツの弟分にした。
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