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奏音には敵いません
それがコウジと、ふたりの目の前にいる丸刈り頭のタツジだ。
キョロキョロと鋭い目付きで辺りを警戒する達治。何かに気付きすぐにテツに報告した。
「どうした?」
「顔見知りのがいたそうです」
「そうか」
龍成が怪訝そうに眉をひそめた。
楮山組が真っ二つに分裂したのはつい2ヶ月前のことだ。
組長が何者かに暗殺されたのをきっかけに、上田と新しく組長に就いた石山が対立し、血で血を争う抗争がはじまった。
タツジの実兄の譲治は、上田の命令で菱沼組の卯月の女房を暗殺しようとしたが、昼行灯の腰抜け野郎と楮山が馬鹿にしていた本部長の柚原に阻止された。譲治は卯月の人となりに深く感銘し、菱沼組に寝返った。命の危機を感じたタツジは上田のもとから逃げ出したが、追っ手に見付かり殺されそうになったとき、たまたま通りかかった遼成に命を救われ、縣一家に寝返り、遼禅のもとで部屋住みとして再出発した、という経歴をもつ。
達治のいう顔見知りの男とはつまり楮山組の構成員のことだ。
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