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奏音には敵いません

「おぃ、クソガキ!どこ見て歩いてんだ!」 ドスのきいた怒鳴り声に客がどよめきはじめた。 遼成が後ろを振り返ると、5歳くらいの男の子を大の大人が三人がかりで取り囲んでいた。 円の中心にいる男は龍成の言う通り、上田の腹心である鈴木という男だ。 遼成に命じられ男をそれとなく監視していた玲士。一部始終を見ていた。 母親とさほど年の変わらない弟と三人で並んでいた男の子。急におしっこと言い出した弟を母親はトイレに連れていった。すぐ戻るからお利口さんにして待ってるのよ。男の子は母親の言いつけをちゃんと守り一人で列に並んでいた。一方の鈴木は電話で話すのに夢中になっていて、男の子に気付かず、自分からぶつかったのにも関わらず逆ギレし、男の子に当たり散らした。 「なるほどな。歩きスマホは危ないって、小学生でも分かることだろう。列に並んでいただけなのに因縁つけられて、とんだ災難だな。玲士、アイスを二個、買ってきてくれ 「はい」玲士は軽食が販売されているワゴン車に急いで向かった。 「コウジ、俺の代わりに奏音と一緒に並んでいてくれ。挨拶してくる」 数人の舎弟を引き連れ遼成は列の最後尾で大声を張り上げている鈴木のもとに向かった。 「奏音坊っちゃん、心配しなくても大丈夫ですよ。オヤジは無敵ですから」 「千ちゃんがいちばん、りょうぱぱと一太くんパパがにばん目につよいって聞いたよ。でも、いちばんつよいのは、ままたんとぱぱたんだって」 「柚原夫婦は影の組長ですからね」 コウジがクククと笑いだした。

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