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奏音には敵いません
「随分と威勢がいい兄ちゃんたちだな。ほら、立てるか?」
遼成が前屈みになり、右手をすっと差し出した。
「おぃ、てめえー」
男たちがあっという間に遼成を取り囲み脅し付けた。
「おんどりゃ!横面を切りゃあがったな!ぶち殺したろうか!」
「ウチの兄貴は神政会 の鈴木だぞ。落とし前きっちりつけさせてもらおうか!」
早口で捲し立てられても遼成は全く動じなかった。
鈴木はじりじりと近付いてくる黒服の男たちの存在にようやく気付いた。その中に達治の姿を見付けるや否や、顔面蒼白になった。
達治が厄介になっているのは縣一家。
こんだけ弾よけがいるということはつまり……もしかしてこの男が組長の縣遼成か?鈴木の顔から血の気がさぁーと引いた。
「止めろ、お前らが束になっても敵う相手じゃねぇ。行くぞ」
慌てて逃げ出した。
息子を助けに行きたくても相手はヤクザ。二の足を踏んでいた母親が弟の手を引いて息子に駆け寄った。
「息子を助けていただいて、ありがとうございます」
「困ったときはお互い様だ」
「ぼく、はるまっていうんだ。おじちゃん、ありがとう」
「はるまっていうのか。いい名前だな」
男の子の頭を撫でると、アイスを手に握らせ、何事もなかったように奏音のもとに戻った。
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