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奏音には敵いません
「大事なことをすっかり忘れていた」
遼成が光希の腰を浮かせると、自身のモノを引き抜こうとした。
「そんなに締め付けるな」
「そんなこと言われてもどうしていいか分からない」
ぶんぶんと首を振る光希。
「昔のことを奏音に思い出させてしまう。辛い記憶は、誰だって思い出したくないだろう。力を入れず、ゆっくり体を起こして、そう上手だ」
遼成は光希の前髪を鋤きあげるとおでこにちゅっと軽く口付けをした。
「続きは奏音が寝てからにしよう」
「うん」逞しい両腕が肩に回ってきて抱き寄せられた。
「心臓の音すごいね」
「光希のだってどくんどくんって早鐘のようだ」
真っ赤になって照れる光希。
奏音がいなかったらエッチを即再開させるところだった。理性を総動員して遼成は踏ん張った。
「こら、奏音。転ぶから走るな!こら、そこのふたりイチャイチャするな!」
泡がまだ残っているのに浴槽に登ると、大好きなママめがけて勢いよく飛び込んだ。
派手な水しぶきが上がり、遼成と光希は頭からお湯を被りびしょ濡れになった。
「もうやんちゃなんだから。怪我をしたらもともこうもないのに」
「だってママはみんなのママだよ。一人じめはだめって、ままたん、いってたよ」
これでもかと頬っぺたを膨らませ遼成を睨んだ。
「柚原はたいしたもんだ。毎日ひとりで5人風呂に入れて、寝かし付けているんだろう。スゲーな。真似しようと思っても無理だ」
龍成が湯舟に入ってきた。
「定員オーバーだ」
「俺だけ仲間外れにする気か」
そうはさせないと強引に割り込んだ。
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